はじめに

 鳥の博物館では、手賀沼周辺にどんな鳥が、どのようにくらしているかを知るために、毎月一回鳥の種類と数を調べました。その結果、手賀沼周辺にどんな鳥が、どんな場所で、どんな季節にくらしているか少しずつ分かってきました。
 今回の企画展では、これらの成果を中心に、手賀沼周辺の鳥のくらしを紹介します。
 水面、ヨシ原、水田や畑、雑木林など、さまざまな環境を鳥たちがどのように利用しくらしているか見てみましょう。
 この企画展がきっかけとなって、「私は手賀沼でこんな鳥を見つけた」とか「手賀沼の鳥のこんなところがおもしろい」など、多くの情報が博物館に集まるといいなと思います。
 鳥の博物館では、集まった情報を整理して公開し、みんなが手軽に身近な自然に親しみ、楽しむことができるようにしたいと思います。


手賀沼の鳥たち
 手賀沼の周辺を一日歩き回ると30種類から40種類、一年間通すと延べ約100種類の鳥が見られます。
 観察を続けていると、手賀沼周辺では夏よりも冬にたくさんの鳥が見られることに気づきます。手賀沼の周辺は、冬に雪があまり積もらないので、雪に閉ざされる北国の鳥たちの冬の避難所になっているのです。
 手賀沼のほとりに立って周囲を見渡すと、手賀沼の水面やヨシ原、沼をとりまく水田や畑地、その背後の斜面林の連なりを見ることができます。
 このように連続的に環境が変化する場所には、さまざまなな環境に適応した多様な鳥がすんでいます。
 水辺を好む鳥、樹林を好む鳥、種類によってすむ場所がちがいます。水面、ヨシ原、水田、斜面林、それぞれの環境に、おもにどんな鳥がくらしているか比べてみましょう。


展示内容

●「水面」の環境と見られる鳥たち

 水面の環境を構成する要素は、比較的単純で、広い水面、水中、沼底、そのほか、漁網や杭などの人工構造物などです。
 水面の広い空間は障害物が少なく、コアジサシやツバメなど高速で飛び回りながら餌をさがす鳥にとっては好都合です。
 また、水中にすむ魚、エビ、プランクトン類や、沼底の泥中に含まれる有機物は、カモやサギの仲間などの水鳥の餌となります。
 水面は陸上からの外敵の侵入を防いでくれるので、水鳥にとって、安全な休息場所となります。

 



●「ヨシ原」の環境と見られる鳥たち

 「ヨシ原」は、水面と陸地を結びつける抽水植物群落(根が水中・泥中、茎・葉が水面より上に出る植物群落)のことです。手賀沼のヨシ原には、水深の浅い方から順にヨシ、マコモ、ヒメガマが生育しています。
 春先、ヨシ原の植物の若い葉や根は、オオバンやコブハクチョウなどの餌になります。冬、枯れたヨシの茎に潜むカイガラムシの仲間は、ヨシ原で越冬するオオジュリンの餌となります。
 またヨシ原は、風や波の破壊力をやわらげ、危険な外敵から姿を隠してくれる安全な営巣場所や休息場所にもなります。 


●「水田」の環境と見られる鳥たち
 水田では、稲作のため、毎年、田起こし→しろかき→田植え→草取り→稲刈りが行われます。生き物の生息環境として水田をみると、一年の周期で規則正しく環境が大きく変化します。
 これは、かつて梅雨や台風の時期になるとあふれだした河川の氾濫源と同じ環境が、人工的に再現しているのと同じです。
 水田の栄養豊かな土壌の中のミミズや昆虫の幼虫などは、長距離の渡りをするシギやチドリなどの餌となり、水田の上に漂う小さな昆虫は、飛びながら餌をとらえるツバメの格好の餌となります。あぜみちに生える草の種は、ホオジロやスズメなどの餌となり、水を張った水田や用水路にすむ小魚、エビ、カエルの仲間は、サギ類の餌となります。
 また、水田のまわりの草原や裸地は、ヒバリやカルガモ、コチドリ、タマシギなどの営巣場所にもなります。



●「斜面林」の環境と見られる鳥たち
 斜面林は、土地利用の難しい急斜面に残っ樹林で、スダジイ、シラカシ、コナラなどドングリ林のほか、松林、竹林などさまざまなタイプの林が混在しています。
 ドングリの実は、アカネズミの餌となり、そのアカネズミを餌とするフクロウが、巨木の洞で子育てします。下草の茂ったヤブの中では、コジュケイやキジが巣をつくります。また樹木の葉陰では、メジロ、ヒヨドリ、キジバトが巣をかけます。樹林にとなりあった人家の軒先や戸袋、屋根のすき間は、ツバメ、スズメ、ムクドリにとって都合のよい営巣場所です。
 斜面林に降った雨は一部は樹木に吸い上げられ、また一部は土壌にしみこみ、徐々に斜面の下にわき水としてしみだします。くぼみにわき水がたまると、小さな池になり、その中の小魚をねらいカワセミがやってきたり、小鳥の水浴び場となります。
 冬、ネズミモチ、ヒサカキ、シロダモなどの樹木の赤や紫色の実は、ヒヨドリやシロハラなど小鳥にとって大切な食料源です。実を食べられた樹木にとっても、種をフンとともに散布されるので、分布拡大のためには好都合です。斜面林の朽木の中にすむ昆虫の幼虫や腐葉土中にすむ土壌動物も、鳥たちの餌となります。

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